ジャガイモの原産地は南米のアンデス高原です。
西洋にもたらしたのはインカ帝国に遠征したスペイン軍で16世紀のことです。
当初は上流階級の鑑賞用が主で、食用として普及するまでには百年以上を要しています。
たとえば食料不足のフランスでの話です。
国王ルイ16世が植物学者バルマンチェに命じ、普及に力をいれましたが、
ジャガイモには迷信もあり、なかなか効果は上がりません。
そこでバルマンチェは一計を案じ、普及を成功させました。
その一計とは、「国王の試作畑に植えたジャガイモを武装した兵士に厳重な警備をさせ、
農民のあいだで噂が高まったころ、夜だけ警備を解く」というものです。
するとジャガイモはどんどん盗まれ、あっと言うまに栽培が広まったのだそうです。
日本へは17世紀にオランダ船により、
ジャワのジャカトラから伝来し、江戸時代末期には全国に広がります。
ジャガタライモと呼ばれ、後にジャガイモとなります。
別名の馬鈴薯は、馬の鈴に似ているからという説、
中国の書物からの引用という説、伝来はマレー(馬齢)からだったという諸説があります。
現在の主用品種の「男爵」は明治40年(1907)、
英国から川田龍吉男爵が北海道の農場へ導入して成功した品種です。
また、メイクイーンは大正時代に米国からの導入ですが、これも元々は英国の育成品種です。
実は、人気の2大品種とも英国出身ということになります。
ジャガイモの成育適温は15〜24度、とくに品質を左右するデンプン蓄積期の地温は17〜22度です。 ジャガイモは、そもそもがアンデスの高原野菜のため 適度な乾燥と低めの地温を好み、湿地と多肥を嫌います。 まさに、カラッとした夏をもつ北海道は最適地なのです。 しかも北海道特有の昼夜の温度差が、デンプンの質を高め、 男爵系のホクホク感、メイクイーン系の甘味を一層引き出してくれます。 全国生産量の約76%を道産ジャガイモが占めるという人気もうなずけます。

【 主な生産地ベスト5 】
平成17年度生産量

一口メモ
芋・薯・藷の3文字、どれもイモですが、それなりに深い意味があります。
芋 | 球茎といい、地中のくきが養分を蓄積したもの。サトイモ類がそれです。 |
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薯 | 地下茎の先端が肥大したもので、塊茎といい、ジャガイモ類がそれです。 |
藷 | 塊根といって根の一部が肥大したものです。サツマイモ類がそれです。 |
主な種類と特徴
男爵いも | ややつぶれた球形で皮は淡黄色で芽の部分のへこみが深い。 粉質のホクホク味が特徴。 男爵いもは、何といっても塩ゆでにしたイモにバターをつけて食べるのが最高。 また、デンプン質が多いのでポテトサラダ、ベークドポテト、フライドポテトに合う。 |
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メークイン | 表面がなめらかで細長い。粘質皮が薄く煮くずれしにくいので煮物料理に向いている。 カレーやシチューや肉じゃがなど、肉、卵、乳製品との煮物に最適 |
キタアカリ | 男爵いもを母親として品種改良したもの。 カロチンやビタミンCの含有量が多く食味が良い。 煮上がりが早いが煮くずれしやすいので長時間煮込む料理には不適。 男爵いも同様、粉吹きいもやポテトサラダ、コロッケなどの料理に適している。 黄金男しゃく、栗じゃがなどの名で売られていることも。 |
インカのめざめ | 皮色は黄褐色で芽の周囲に紫の着色があるものが多く、肉色は橙色に近い濃黄色。 煮くずれが少ないので煮物に適し、ポテトチップスやフライドポテトにも合う。 独特の肉色や甘味を生かした菓子材料にも適している。 |
